おとなフィクションR40G

肉体の変化や変身などの特殊性癖・性倒錯をテーマとしたアダルト小説

※警告※ 未成年者の方、特殊性癖を嫌悪する方はご遠慮下さい。

 代謝維持溶液の赤いプールに胸元まで浸かりながら、彼女は司令官の到着を待ちわびていた。身長百メートルを超える肉体は、もはや陸上では生存不可能なサイズとなっていたが、こうして水中に止まれば、比類なきパワーを発揮することが出来た。
「変化」がいち早く訪れた者の多くは急速な邪進化に陥り、ことごとく脱落していった。残ったのは、地道なトレーニングをこつこつと積み重ねてきた者たちだ。
 終盤に至るまで変化のスピードは遅かったが、あるとき一気に、花が咲き誇るように眠っていた能力が目覚め、脱落していった者たちをはるかにしのぐ大きさへと育ったのだ。
(コノ身体ハ……? 強化選手ノ身体デハナイ。ソレヨリモズット大キイ)

 ハッチが開き、機密スーツを着た一団がブリッジを渡ってきた。彼女の頭部付近まで歩み寄り、立ち止まると二つに割れた。
 スーツを着ていても恰幅のよさがわかる男が、中央から進み出た。ブートキャンプの司令官である。
「おめでとう。篠田尚子君。君たち六名が今回の勝利者だ」
 彼女の反応はなかった。ゆっくりと、遠い記憶をたどりながら、沈黙を続ける。
(篠田尚子……。ソウ、ソウイウ名前ダッタ。ソウ呼バレテイタ)
「強化選手というのは、二番手、三番手のグループでしかない。実戦では到底役に立たない。一番手のグループ、君たちが行く場所は、下らないスポーツ大会などではないのだ」
 彼女……尚子だった存在も、自分たちが強化選手のレベルをとっくに超えてしまっていることは、自覚していた。
「何のためにわれわれが莫大な予算を注ぎ込んでいるか、君にはもうわかっているね?」
「ふごごごご……」
 声帯も巨大化しており、人間の音声を発することは難しくなっていた。だが、脳に直結したワイヤーからの信号をチップが捕らえ、伝達することは出来る。彼女たち同士だと、音声でのコミュニケーションをはるかに超えるスピードでの意志疎通が可能であり、戦闘時の指揮命令系統として、抜群の能力を発揮するよう設計されていた。

 篠田尚子と呼ばれていた巨大兵器の脳裏に、一瞬、遠い記憶がよみがえった。
 学校時代の部活動で、顧問やチームメイトたちの前で宣言した場面だ。
(わたし、強化バレーボールの選手になるっ! そして、世界大会に出るの! わたしの夢!)
 幼く微笑ましい夢だ。だが、それがあったからこそ、ここに至ることが出来たのである。けっして忘れるわけにはいかない。
 未来には果てしなく大きなミッションが待ちかまえているが、幼く小さな夢は、きっと彼女を支え続けてくれることであろう。

乙女のブートキャンプ〈完〉


  

 鮫島が雄美の頭を抱いて語りかけた。
「オレは、ずっと自分がゲイだと思っていた。しかし……もしかしたら、お前のような女を求めていたのかもしれない。男以上に逞しく、身体と身体、力と力、全力でわかりあえる女を……」
 雄美は鮫島の言葉に黙って耳を傾けていた。すると、ついに告げられたのだ。
「女でもいい。お前が好きだ!」
 まるで奇跡のような瞬間。
「コーチ! わたし……わたし……。嬉しいっ!!」
 雄美は思いっきり抱きつき、鮫島の胸に顔を埋めた。
「強化選手なんかにならなくていい。これ以上お前が大きくなってしまったら、こうして二人で楽しむことなんか出来なくなってしまう。国へ帰ろう。オレと暮らしてくれ」
「え……?」
「絶対、幸せにしてやる!」
 雄美は耳を疑った。しかしどうやら、これは夢ではないようだ。
「は……はい、コーチ!」

 強化選手としての雄美の物語はここで終わる。だが彼女にはこれからまだ、長い長い、べつの物語が用意されているはずだ。
 異色のカップルとして人目を引くことは避けられそうにないが、彼女ならきっと、幸せをつかむことが出来ることだろう。

第4話 鬼頭雄美──片恋〈完〉

  

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