薄い下着を突き上げ、隠しようもなく隆起した肉根を誇りながら、育恵は土俵へやってきた。
 身体自体も、四メートル近い巨体となっていた。そして男性を凌ぐほどの筋肉の鎧。第五班のメンバーたちは、驚きの声を上げた。少女の頭部にこの逞しいボディというのは、何かの間違いにしか見えなかった。
 土俵の中央にそびえ立った。そして両手を腰に当て、ぱっくりと六つに割れた腹筋を得意げに披露した。

 そこへもうひとつ、やはり四メートル近い人影が現れた。真っ白に輝くギリシア彫刻のボディで、ロングヘアを背中にまとめた女性。
 玉絵もまた、一晩で変貌を遂げていた。育恵同様、股間は大ぶりな肉根で盛り上がっていた。
 足音がずしりと重い。重量級のボディで土俵に上がると、地響きがするようであった。
 両者が正面から向かい合った。

 育恵はあらためて、ライバルの身体に見入ってしまった。
 全身の筋肉が大きく発達し、岩のようにボコボコと盛り上がっていた。しかもボディビルダーではあまり見かけない、真っ白な肌をしている。肉体美を追求した古典古代の大理石像のようで、これが動いているのが信じられないような眺めであった。
 男性にはない大振りな乳首と、ぷっくりとした唇がピンクに染まっており、エロチックな誘惑をしているかのようだった。
 玉絵は美しかった。男なのか女なのかわからぬ身体へと変貌を遂げていたが、それがかえって、人間というカテゴリーを超越したかのような存在感をアピールしていた。
 育恵はわれ知らず胸が高鳴るのを覚えた。握った拳がじっとりと汗ばんでいた。そして身体のいちばん奥から巨大な欲望が沸き起こり、育恵の脳裏を真っ赤に染め上げて行くのだった。

(玉絵を犯したい……。殴りつけ、組み伏せ、のし掛かり……。本能の赴くままにレイプし尽くしたい……)
 育恵は欲望の波に飲み尽くされそうになった。
 相手も同様だった。玉絵が欲望をたぎらせ、育恵を凝視していることに気がついた。股間の肉根が、ビクン、ビクンと打ち震えていた。
「どうやら、お互い同じことを考えてるみたいだな。せっかく立派なものが生えてきたんだし」
「ええ。わかってる。あなたが欲しくてたまらないわ、育恵さん」
 そういうと、玉絵は赤い唇をぺろりと舌で舐めた。舌は唾液でぬらぬらと光り輝いていた。
「勝った奴が先だ。目つぶしや急所攻撃以外は何でもアリ。OK?」
「了解ですわ……」

 間を置かず、玉絵が強烈な右ストレートを腹にブチ込んできた。上品そうな顔立ちをしているが、やるときはやる。素早い。しかしボスッと鈍い音はしたものの、分厚い腹筋に阻まれた。ダメージはあったが、たいしたものではない。
「ふん、いきなり先制攻撃かよ」
 お返しとばかりに、育恵は右フックを玉絵のこめかみに喰らわした。ここはあまり鍛えることが出来ない。相手はグラリとバランスを崩しかけたが、太い首がショックを吸収したのであろう。すぐに体勢を立て直し、反撃に打って出た。
 何発もの強烈なパンチがお互いのボディに打ち込まれた。色白の玉絵の肌が真っ赤に染まっていったが、ダメージ自体は両者とも互角だ。イーブンである。
 打たれれば打たれるほど、欲望がかき立てられていくのか、肉根をはち切れんばかりに勃起させ、熱い息を吐き、涎をたぎらせながら、両者とも相手に挑みかかっていった。

 育恵は酔い痴れていた。女の美しい顔をぶん殴ってやるのが心地よかった。と思う間もなく、その何倍もの反撃がこちらの顔面を狙って飛んできた。まともに喰らうと頭が一瞬真っ白になる。だがこの強靱なボディは、すぐに攻撃に移れるほどの能力を秘めている。
 拳と拳の殴り合いは、最高レベルの肉体を持つ者たちだけに許された、愛の会話なのだ。

 今度はがっぷりと組んだ。
 身体が密着すると、相手の筋力や骨格がよくわかる。息づかいも闘志もダイレクトに伝わってくる。
(犯してやる! 犯してやる! 犯してやる!)
 玉絵を睨みつけると、相手も同じ意志を返してきた。気持が奮い立つ。
 力比べが続いた。ガッチリと固まった筋肉はけっして隙を見せることなく、相手を押さえ込もうと全力を挙げ続けた。バキ、バキと、筋肉が現在進行形で巨大化しつつあるのがわかった。

 力は互角。となると体格で上回る必要がある。身体がそう自覚し、育恵をさらに大きく、強く造りかえていった。ミシミシと薄いパンツが悲鳴を上げ、脚を踏ん張った勢いではじけ飛んでいった。
 巨根が剥き出しになった。間を置かず、玉絵も同じ姿になった。
「がぁああああああっ!!」
 玉絵が美しい顔を歪め、決死の気合いを放った。先に仕掛けてきた。育恵を潰そうともの凄いパワーでのし掛かってきた。
 が、いまにも押し倒さんばかりとなったそのとき。一瞬、玉絵の力がゆるんだ。
「うひっ……」と、小さな悲鳴を上げ、顔をしかめる。
 股間のイチモツから、先走り汁が漏れ出していた。勝利の予感に気が弛んだのだろうか。欲望が意志に反し、フライングを犯してしまったのだ。
 育恵はその隙を見逃さなかった。