練習を終えてシャワーを浴び、食堂で夕食を済ませたあとは、自由時間となる。
 ライバルたちに差をつけるため、寝る間も惜しんでトレーニングに励む者もいた。
 またあるいは、カップルとなって恋の時間を過ごす者たちもいた。彼女たちが得た肉根は、格好の道具となった。
 一方、満代は、夕食だけではとても足りず、自室に引き上げてもひたすら食事を続けるのであった。

 個室で火を使うことは出来なかった。飲み物と青果を保存しておくための、簡単な冷蔵庫があるだけだ。
 なので、パンや果物、ナッツ類、乾物、スナック菓子、そして栄養補助ドリンクなどが食事の中心となる
 満代は脂肪ではなく筋肉を付けたかったので、バランスを考えながら食事を摂っているつもりではあった。だがそれでも、結果はこの豊満な巨体なのである。
 これは体質なのであろう。
 しかし太るとわかっていても、食べるのをやめることは出来なかった。ライバルたちよりも、一回りも二回りも大きな身体を維持し続けなければ、何をされるかわかったものではない。
 このキャンプは、喰うか喰われるかの戦場なのだ。自分以外に頼れる者はいない。

(食べなくちゃ……。食べなくちゃ……)
 バナナを何本も平らげ、プロテインドリンクでゴクゴクと流し込む。栄養補助ビスケットは何本でも食べることが出来そうだった。
(奴らに襲われてもレイプされないように、もっと大きくならなくちゃ。誰よりも強く、大きく。もっと食べなくちゃ……)
 ただひたすら食べ続けていると、脳内に快楽物質が満ち溢れてくるのだろうか。心地よさに酔い痴れてしまう。
 そして、猛然たる食欲が沸き起こるのである。
(食べると頭がぼおっとしてきて、幸せで一杯になる。お腹いっぱいの食べ物が胃から吸収されて、どんどんわたしの身体になっていく。食べた分だけどんどん身体が大きくなっていく)
(ダメだ、まだ食べ足りない……)

 消灯時間まではまだ間があったが、満代は待たずに部屋を出ることにした。廊下の照明は明るさを落としており、自販機やロビーの鉢植えの影など、女同士のカップルが身を隠す場所はいくつもあった。
 すでに一戦を終えて、余韻を楽しむために部屋から出てきたカップルが多くなる時間だ。中性的な美少年同士が身を寄せ合い、服の上からお互いの身体や性器をこっそり愛撫しているかのようにも見えた。
 だが、その穏やかで優しい空気も、満代の豊満な肉体を目撃すると、見る影もなく瓦解してしまう。

 見上げるような大女が、薄いシャツと短パンだけの露わな姿で、至近距離を歩いて行くのである。
 乳房も尻もぶるんぶるんと揺れる。長い黒髪が流れ、太い身体に似合わぬ美貌が、艶然と笑みを返すのである。
 仲睦まじかったはずのカップルの間に、ざわざわとさざ波が立ち、その心を欲望まみれにしてしまう。
 圧倒的な量を誇る女の肉。恋とか親密な気持とか、そんなデリケートな感情など、軽く吹き飛ばしてしまうパワーがあった。

 満代は悠然と廊下を進みながら、いたるところで、男体化した少女たちの心に嵐を巻き起こしていくのであった。