物流センターのように広大な倉庫内には、保存食糧のダンボールがうずたかく積み上げられていた。一方の壁面は冷蔵室と冷凍室の分厚いドアで占められ、生鮮食品や冷凍肉などがぎっしりと蓄えられている。
 驚異的な成長を遂げる少女たちの身体を作り上げるためには、膨大な食糧が必要なのである。

 肉が食べたくて仕方がなかった。満代の胃袋は良質のタンパク源を求めて、猛烈な食欲をアピールし続けているのだ。
 冷蔵室の重い扉を開いて、ハムやソーセージ、チャーシューなどを物色し、両手いっぱいに抱えて持ち出した。ハムの塊のパッケージを開くと齧り付き、貪るように食べながら今度は冷凍室へと向かった。
 牛なら生で食べても大丈夫であろう。ビニールシートを拡げて解体肉のブロックを放り投げると、そのまま自然解凍に任せることにした。
 そして持ち出したハムやソーセージの山まで戻ると、腰を据えて猛然とかぶりつくのだった。

 一心不乱に食べ続けていたせいで気がつかなかったのであろうか。
 倉庫入り口のドアが閉まる音が響き、ガチャリと内側から施錠された。
 何者かが立っている。
「盗み喰いか……呆れた。そんな太った身体しているのに、まだ食べたりないんだ」
 変声期の少年のような、中途半端な声。クスクスと笑っている。訓練生の誰かに違いない。照明の当たるところへ現れると、美桜(みお)だとわかった。片手に金属バットを握りしめ、だらりと脇へ垂らしていた。

 キャンプに来たばかりの頃の美桜は、どんな少女だっただろうか。
 バレー部の生徒なのだから身体だけは人より大きかったが、運動能力は低く、むしろ普通の少女たちにように、ファッションやショッピング、他愛ないおしゃべりなどが好きなタイプだったはずだ。
 しかし男体化が、彼女の眠っていた願望を呼び覚ましていた。巨大な身体と見事に発達した筋肉。強い力。そして男性をも凌ぐほど立派な肉根。
 あまりにも容易く力を得た者は、その能力を過信しがちである。いまの彼女が、まさにその状態であった。以前の自分自身を思えば、女の身体というものがひどく弱々しく思えてしまうところもあるのだろう。
 だが満代に挑もうというのは、少々無謀すぎたかも知れない。

「何の用かな?」
 満代は立ち上がって、美桜のところへと歩を進めた。
 体格差は激しい。身長でも相手は満代の胸までしかないのだが、体重となると四倍もの差があるのだ。
 間近で見上げるとやはり恐ろしいのであろう。顔にも声にも脅えの色が表れた。
「こ、降参したほうがいいんじゃないかな? こっちは武器を持っている」と美桜。だが満代が冷徹に見下ろすと、それ以上言葉が出てこなかった。
 怯えと性欲の板挟みになっているのが、誰の目にも明らかであった。
「さあ、どうだろう? わたしの相手になるかどうか」
 満代は余裕の笑みを浮かべて答えた。両腕を背後へと回して組み、ノーガードの体勢を取る。
「まずは……そうね、そのバットを思いっきり試してみる?」
 挑発され、美桜の顔色がさっと変わった。
「こ、このっ……!!」
 短く叫ぶと、渾身の一撃を腹に打ち込んできた。
 大人しいタイプだとはいっても、強化選手の候補生である。すでに身長は三メートル六十センチ、体重五百六十キロ、男体化も進行して、鎧のように分厚い筋肉を全身にまとっているのだ。
「くぬっ……」
 だが金属バットは、満代の分厚い脂肪層にズブリとめり込んだだけであった。その奥には強靱な筋肉層が控えており、内臓を強力にガードしているのだ。
 二発目、三発目と続けざまにブチ込む。が、まるでダメージを与えることが出来ない。
「お腹とかじゃなくておっぱいにしなよ」
 満代が薄いシャツに手をかけ、一気にまくり上げた。ブルンッと、巨大な肉塊が躍り出る。さらにもうひとつ。
 真っ白で中身のいっぱい詰まった肉袋が二つ、ブラブラと垂れ下がるような眺めとなった。それぞれが人間の頭と同じくらい大きいという、これもまた規格外のサイズである。

 美桜の表情が衝撃を受けたかのように固まった。ここまで大きな乳房というものを、見たことがなかったのであろう。血が逆上せ上がり、首から上がみるみるうちに真っ赤になった。
「すご……」といって口ごもる。
 満代はクスリと笑った。
(自分だってこの間までは、大きなおっぱいの女の子だったくせに。何を興奮しているのだろう)
 美桜のうろたえ方が面白かった。彼女は無意識のうちに、魅せられたように、右手を満代の乳房に伸ばしていた。
「うふんっ……」
 美桜の手が触れると、わざわざ色気のある声を出してみた。気の毒なくらい怯えた表情になる。握りしめた左手が緩み、バットが床に落ちて鈍い金属音を響かせた。
 「どう?」といって、美桜の両手首を握った。そして乳房へと導く。両手が柔らかな乳肉の中へズブズブと埋まっていった。
 美桜の腰つきがおかしくなっていた。すでに肉根が勃起して、痛いくらいに腫れ上がっているのであろう。
 完全に満代の虜となっていた。